私の祖母は賢い人で、私は子供のころよく聞いた言葉を生涯忘れずに生きてきました。なぜ忘れなかったかと言うと、後で「成程そうか、その通りだ」と納得できたからです。いくつかご紹介する際に、もう一人、いえ、多分他にも引用させていただくと思います。何しろ自分で発見したことなど微々たるものですので、人生で巡り合う幸運に恵まれた賢い方々の発見、卓見をお借りしてのお話をしていくことになるかと思います。
さて、近い将来人類は前代未聞の情報の洪水に飲み込まれ、アップアップすることになるかもしれません。溺れない程度の少量の情報公開であれば何とか処理していけるかもしれませんが、それでもなおかつ、精神的にも肉体的にも苦痛な体験をする人たちも大勢いるかと思います。それを乗り越える用意が出来ている方々が縁あって今この記事をお読みになっていると思います。
祖母のことば
人の心の奥底にゃ、鬼が住むか、蛇が住むか
自分自身の心を客観的に観ることに慣れた人だからこそ、これに気づいているのです。
げに、悪に強い者は善にも強いものじゃ
ある時、遊郭で散財していた夫の借金を取り立てに高利貸が祖母に返済をせまりに来ました。金額を聞き、頷いて、泣きも、嘆きもせずに、平静に、あるだけの金を今渡すが、足りない分はこれから払えるだけ払って行きますと答え、そして返済計画を話しました。働き者だった祖母は様々な才能を持っていたので、収入を得る手段も持っていたようです。この様子をじっと見ていたその男は承知した後、寺の後援者になってくれたそうです。悪鬼のように思われている高利貸が、祖母には良き相談者となり、お布施もくれるようなったそうです。
尊敬する親鸞聖人の書をよく読んでいた祖母は「善悪一如」ということばの真意もよく理解していたようです。
表題の言葉ですが、IT用語でバックドアというものがあります。裏口、勝手口という意味の語です。ソフトウエアやシステムの一部として管理者や利用者に気づかれないよう秘密裏に仕込まれた、遠隔操作のための接続窓口をこのように呼ぶそうです。
実はこの接続窓口は各人の心の中にもあるのです。
善悪一如という大法則を知らない人は、自分は棚に上げ、他者をさばき、勧善懲悪とばかりにヒーローを気取って悪者を退治して、これからは平和な世の中になる、と思うでしょう。
ところがどっこい、そうは問屋がおろさないのです。
私にインスピレーションを与えてくださる、賢人ルドルフ・シュタイナーも言っています。
何かが一方において無視されて、無力化されると、その何かは境域または境界の正反対の側から別の姿をとって現れてくる
欠陥を非難する事によって学ぶのではなく、欠陥を理解する事によってのみ学ぶことが精神性を高める
神智学、仏法あるいは光透波理論を学び、宇宙の構造とその成り立ちを学ぶ人にとっては、当たり前のように受け取られていると思いますが、実はそうでもないと私は体験的に知っています。
心の断捨離をしていると様々な感情の嵐に襲われることがあります。ひとつひとつ観察しては消えて行くのを見てきましたが、なんとまだまだ残っているのです。あきれるほど執こく、心の襞の間に隠れているのです。それを知っていると、怒りや復讐心がむらむらと湧き上がって来た時に対応できます。もう一つ、シュタイナーのことばを。
悪の本当の意味は人間の利己主義と結びついて考える時、初めて見えてきます。そして自分の中の悪、不完全さと戦い、それを克服する可能性は自分の中の利己主義をどう克服するかの一点にかかっているのです
2023.10.01