母音という言葉はありますが、父音という言葉がないのは何故でしょうか。そういう音が無いから言葉が無いのだと昔から決まったことのように思われてきました。ところが実はあるのだと言うことを納得できる理論で展開された方が小田野早秧という反骨精神の塊のような人です。小さな子供の頃から疑問が服を着ているような性格丸出しに、何故そうなの、何故、どうしてと家じゅうの大人を質問責めにしていたそうですが、多くの場合は、
「昔からそうに決まっとる」というのが答えだったそうです。
「これはどうも自分で探さなければ満足の行く答は見つからない」と早くに諦めて、それからは沈思黙考の人となり、持ち前の粘りと飽くなき探求心を持って「光透波」という前代未聞の理論を確立して行かれたのです。
お釈迦様でもキリスト様でもそうとははっきり教えていらっしゃらなかった究極の疑問に食らいついて、一心不乱に答を探し求めて生きた。人からはまるで狂人扱いにされ、家族親類にまで愛想をつかされる始末。でもどうしてもやめられない因果な性分なのよ。
生前何度もそのように述懐されていたことが耳に残っています。少しでも手がかりがあるとそれを掴んで決して離さずに突き詰めていった根性は凄まじいものでした。寝食を忘れてしまうのです。一日の生活の割り当て表を作り、22時間を研究に当て、残りの2時間を睡眠、食事、排せつ、身づくろい等に当てて数年がかりで作成された究極の答である「音と意味の表(云音表)」が遺されています。その表を手掛かりに父の音について少しお話しします。
まず母音ですが、日本語には5個あります。他の言語にはもっとあるものもあるそうですが、よく聞くと幾つもの音が重なって一音のように聞こえるだけで、語尾を伸ばしたり抑揚をつけたりしないで単純に一音節で発音できるという形での母音は5個だそうです。ア、イ、ウ、エ、オ(A,I,U,E,O)ですね。これに瞬間音、例えばKがつくとKA,KI,KU,KE,KO、カ、キ、ク、ケ、コという音になります。これらは子音ですね。
次にこの子音を伸ばして発音して見ましょう。
「カ~」と伸ばすと最後はアになります。同様にキはイになります。全ての子音は伸ばすと母音になることから、
「子音は母音に帰る」
と小田野先生は指摘しています。実際に発音して確認して見てください。次にここがポイントです。あらゆる音を思いつく限り、例えば自分の姓名を口を閉じたままで発音して見てください。サトウハチロウならどうでしょう。「ンンンンンンン」とぜんぶ「ン」になります。どの音でも良いので試してごらんになれば納得されることでしょう。これを先生は、
母音も含め全ての音は口を閉じて発音すると「ン」になることから、「帰る」の逆に、「出てくる」と結論づけされました。全ての音が母音に帰るのなら全ての音が出てくる元の音は何であろう。子音という子供を作るのに母だけでは足りない、父がいなければ。そういう大自然の法則を考えると当然出てきた答は父の音でした。父母があって子が出来る、そして父は先にあって、父が母に種を植え付けて初めて母は受胎できる。その順序でなくてはならない。
父音をフオンと読むと面白いことが分かります。英語では音のことをPHONE(フオン)と言うのです。音声学はPHONETIC、遠くに音を運ぶ機械はTELLEPHONEと言いますね。その昔ギリシャで音というものに付けられた名称をボオンと言わずにフオンと言うことをもう少し考えて見ましょう。
父が無くしては、母はその本来の役割である産生という活動ができない。そして父母が無ければ子は生まれて来られない。この永遠普遍の法則に則って作られたのが、音が云んでいる表(ンオンヒョウ)の骨格構造と順番なのです。
父あってこその私たち、つまり「宇宙の子」なのです。言い換えれば大自然の申し子、神の子なのです。
2016.7.8